――ついに『HERO'S』参戦が決まりましたね。昨年3月に記者会見に出席してから、いったい何をされていたのですか?
山本 よく聞かれるんですけどね…(笑)。去年はいろいろあったんですけど、事故でケガをしたのが、一番大きな原因です。
――それはいつ頃ですか。
山本 6月30日ですかね。プライベートなんですけど…、車にはねられたんですよ。
――えっ!?
山本 で、はねられて3mくらい飛ばされたのかな。右肩から落ちて、肩鎖関節っていうところの靭帯が全部切れて、骨が上にいっちゃったんです。手術をして、2ヵ月くらい固定していました。全治には6ヵ月以上はかかったんじゃないですかね。
――車にはねられた時には、どんなことが頭によぎりましたか。
山本 一瞬なんで、考える暇もなにもないですね。でも格闘技をやっていますから、瞬間的に急所を守らなきゃいけないって本能で動いていました。ヘソを見たんです。そうすると頭が上がる。だから右肩から落ちましたけど、頭は大丈夫だった。治せば格闘技はできますけど、五体満足じゃなくなったり命を落としていたら、それまででしたからね。

――絶望的な気持ちにはなりませんでしたか。
山本 一瞬だけですね。一瞬だけ「どうなるんだろう」と自分のなかで考えましたけど、それだけですね。
――すぐ、復帰に頭がいった。
山本 今、自分ができることを最優先で考えて。命があったわけですから、何とかなるだろうと。闘うことには、自分のなかでずっと信念を持っていますので。その気持ちが折れない限り、大丈夫だろうと自分で思っていました。試合をして満足するというか、100点を取るというのはなかなかないんですよ。達成感を得たり、頂点に立った時ってないですから。それが僕の最大の目標ですから、そこを目指していきますね。
――アクシデントを乗り越えて、師匠の前田スーパーバイザーが携わる念願の舞台に出場する。どのような心境ですか。
山本 そうですね…、不安と恍惚かな。あまり深いものは考えていないんですけど、こうしてまた前田さんのもとで闘えることは、線で繋がっているんだなって感じますね。たとえアクシデントであっても、人生で意味がないことはないので。必ずつじつまが合うものだと思っているんですよ。

――交通事故にも、意味があるのですか。
山本 ありますね。その時は「うわっ」と思いましたけど、時間が経つにつれてプラス思考で考えていきましたから。
――その結果、今大会で韓国の柔道王キム・ミンス選手との対戦が決まりました。彼を見た、率直な印象は。
山本 向こうっ気が強いですね。前に前に出てくる選手だなと思います。
――山本選手も前進し続けるタイプ。すごいことになりそうですね。
山本 ヘビー級の醍醐味は、真っ向勝負。ダイナミックなことをやっていくのが、僕のスタイルだと思いますので。中量級は技術やスピードがスタイル。ヘビー級は、ダイナミックさと迫力を出していかないと。分かりやすい試合を見せたいですね。
――つまり、殴り合う。
山本 バイオレンス的なことじゃなく、愛情をこめたシバキ合いですね。
――“愛情”ですか?
山本 選手に対する尊敬の念というか。あれだけの舞台に上がってくる選手ですから、どの選手にも尊敬している思いはあるんですよ。そういう意味で、愛情のシバキ合いです。
――キム・ミンス選手にも愛情を持ってもらって、お互いにシバキ合う。
山本 そうですね。気持ちと気持ちのぶつかり合いですね。

――この試合をキッカケに、今年をどのような1年にしたいですか。
山本 先のビジョンまでは、あまり考えていないんですよ。でも技術的な練習はできなかったんですけど、今この時期に考えるべきことというのは、たくさんあったと思うんですね。普通の生活をして試合をしていたら、考えられなかった時期でもあったと思うんですよ。だから、後になって「ああ、あれはいい時期だったな」と思えるように、3月から新しく出発していきたいですよね。
――試合をしていない期間で、自分のなかで一番変わったことは。
山本 変わったこと…、いい意味で大人になったのかな。
――それを具体的に言うと。
山本 具体的に?(笑) うーん…、物事を前向きに考えるようになりましたね。もともとプラス思考なんですけど、より一層前向きに。以前は怒ることもありましたけど、許す心もできました。
――それが、試合をするうえでの愛につながるのですね。
山本 そうですね。相手が前に出て気持ちでぶつかってくるなら、それに応えますよ。
――では3月15日の『HERO'S』は、愛ある闘いを期待していいですか?
山本 はい(笑)。■


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「今は、ケガは大丈夫」と復活を強調した山本。どん底から這い上がった男の闘志は、ハンパじゃない!

自転車に乗っているところを車に当たられ、3メートルも吹っ飛ばされたという山本。普通の人間ならどうなっていたのか…

山本は、かつて前田スーパーバイザーが立ち上げた『RINGS』の生え抜き選手。前田スーパーバイザーとは、強い信頼関係で結ばれている

対戦相手のキム・ミンスは2005・11・5『HERO'S』韓国大会でショーン・オヘアに勝利し、勢いに乗りつつある手強い相手だ
前田スーパーバイザーは、85kg級やヘビー級のトーナメントの開催を計画しているという。山本は、ヘビー級のキーパーソンの一人となりそうだ


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