ライトヘビー級トーナメント(仮称=85kg前後)が開催されることで話題を呼んでいる『Sammy Presents HERO'S 2006』(5月3日、東京・国立代々木競技場第一体育館)。このライトヘビー級は、B.J.ペンを筆頭に世界の強豪がひしめき合う、とても厳しい階級だ。迎え撃つ日本勢のなかで期待がかかるのは、“平成のコンデ・コマ”こと秋山成勲。彼は今、どんなことをテーマに練習に取り組んでいるのだろうか。

「外国人にばかり勝たれてもねぇ。日本でやるのに、さみしい思いはしたくないですよ」
 5・3『HERO'S』代々木大会で開催されるライトヘビー級トーナメント(仮称)へ向けて猛特訓を積んでいる、日本のエース・秋山成勲はそう言って唇を噛み締めた。85kg前後の体重が想定されているライトヘビー級トーナメントは、谷川プロデューサーと前田日明HERO'Sスーパーバイザーがともに「世界のレベルが最も高く、日本が頂点に立つのはひじょうに厳しいでしょう」と口を揃えるほど、王座を取るのは難しい。

 B.J.ペン、ホイス、ホドリゴ、ヘンゾのグレイシー一家…、そして大山峻護を打撃でTKOに追い込んだオランダのメルヴィン・マヌーフなど、豪華なメンバーが名を連ねている。マヌーフは、日本ではまだ無名だが、『CAGE RAGE』で実力者のエヴァンゲリスタ・サイボーグを殴り倒したことで一躍、その名を広めた。B.J.、グレイシー一家、マヌーフ、ここに並べた一部の有力選手の名前を聞いただけでも、日本人が勝つのは容易ではないことが分かるはずだ。

 だが、秋山はあえてその難関に挑む覚悟を持っている。
「やっと自分たちが出られるトーナメントが開かれるようになりました。自分は日本、そして韓国を同時に背負って、チームを引っ張っていきたいと思います。終わってみたら、世界が強かったなんて、面白くないですからね。それに柔道時代から、80、90kgは世界の層が厚いと言われてきています。それが当たり前と思っているので、いまさら驚きませんよ」

 ミドル級は、山本“KID”徳郁と須藤元気が決勝戦を争った。「ミドル級決勝戦のように、この階級でも日本人対決にしないと」と秋山は言う。まだチームJAPANのメンバーは決まっていないが、永田克彦、大山峻護、門馬秀貴、岡見勇信らが候補に挙がっている。彼らがお互いに闘う前に、日本が王座を取るというテーマが優先といっていいだろう。

 そのために秋山は、門馬、岡見らと和術慧舟會RJWで厳しい練習に取り組んでいた。寝技の乱取りを3分×7本、打撃のスパーリングを3分×10本、二人組で片方が転がって一方がその上を飛び越えることを繰り返してからの寝技のスパー、3分×3本、すべてインターバルは10秒という過酷なもの。もちろん、すべての運動が終わると腕立て、スクワットなどの補強運動が待っている。2時間強の練習は、内容が濃く、プロでさえ初めて参加したら、ついていくのがやっとのはずだ。

 疲労困憊の秋山は、練習が終わっても門馬に総合格闘技の寝技の動きを確認。納得がいくまで反復し、頭と体に叩き込んでいた。
「これまで総合格闘技をやってきて、少しずつ形になっているような感じもしますが、まだまだ物足りない。パンチ、蹴り、寝技でも足りないものを感じているんです。前回の石澤(常光)選手との試合でも、パンチで追い込み、投げてテイクダウンを奪い、最後は絞め技(袖車絞め)で勝つことができましたが、本来ならばあそこまで打撃を当てていれば、KOしないとダメでしょう」と納得していない。つまり、彼が感じる物足りなさは、パンチや蹴りでの手応え、寝技での完璧な形が、まだ不完全だと思っているからに違いない。

 秋山が総合格闘技に足を踏み入れた直後、彼はハワイへ武者修行に出かけ、そこでB.J.の強さを目の当たりにしている。B.J.との差を埋めるために、秋山は立てなくなるほどのハードな練習を重ね、試合で強豪たちにもまれてきた。
「B.J.を初めて見たときは、まだ総合格闘技を始めて数ヶ月。あのときと今では、見る観点も変わってきています。できれば自分がどれだけ成長したのか、もう一回、B.J.を間近に見てみたいですね。彼がトーナメントに出てくれば、リングの上で確認することになりますけど」

 あとから、あとから流れ落ちる汗を拭きながら、秋山は白い歯をのぞかせた。「B.J.も強いけど、ホドリゴ、マヌーフと強豪ばかり。70kgに落とそうかなと、ときどき思いますよ」と苦笑する秋山だが、その目は鋭さを失ってはいない。5・3『HERO'S』では、秋山に試練が待っているのは間違いないが、きっと最後はHEROになっているのではないだろうか。■


ライトヘビー級の主役として期待されている秋山成勲。彼は、世界の強豪に勝てるのだろうか

和術慧舟會RJWで汗を流す秋山は、門馬、岡見らと激しいスパーリングを繰り広げていた

「自分の能力を打撃、寝技、投げなどに分けて円グラフにしたら、まだ小さい丸。投げは他の選手よりも数値は高いと思いますが、今は打撃のレベルアップに取り組んでいます」と秋山。この日は、ヒザ蹴りとミドルキックを何度も決めていた

「今、取り組んでいるテーマは、つねに力を抜くこと。力を使うとバテるし、頼る部分があった。力を抜いて早く動けるように心掛けています」(秋山)


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