5・3HERO'S代々木大会で行なわれる『ミドル級最強王者決定トーナメント開幕戦』の出場予定選手を聞いた宮田和幸は、表情を曇らせた。
“自分の名前が、どこにもない”
 現ミドル級世界王者の山本“KID”徳郁と闘うとはいえ、あくまでもスーパーファイト。シード権を獲得しているKIDや須藤元気はともかく、宮田は何も保障がない。この立場の違いに憤りを覚えたという。

「対戦が決まったあとにトーナメントをやると聞いて、なんか自分の名前が入っていないんで、すごいナメられているのかなと思いましたね」
 そう言って、宮田は口を尖らせた。もちろん、推薦枠があるためKIDに勝つか善戦すれば、文句なしの出場権を得ることはできるだろう。だが、実力でのし上がりたい宮田にとって、そうしたハッキリしない基準はどうも釈然としないのかもしれない。

「まあ、でもKIDに勝てる選手は、相性的に僕か高谷(裕之)君しかいない。だって、他の選手が寝技が得意だといっても、KIDからテイクダウンを奪えないでしょう? つまりタックルに自信のある僕か、打撃のできる高谷君しか、KIDを倒せる選手はいないことになる。よく僕を選んでくれたと感謝します」

 トーナメントへの出場権はないが、KID戦へ向けてかなりの手応えを持っているのは事実のようだ。
もともと宮田は、レスリング五輪代表として、鳴り物入りで総合格闘技の世界へ入ってきた。2004年11月20日のデビュー戦は、いきなりホイラー・グレイシーと対戦。パウンドで失神寸前まで追い込むが、三角絞めでプロの洗礼を受けた。翌年の2005年は、イアン・シャファーに判定負け。シャミール・ガイダルベコフをチョーク・スリーパーで下すが、ミドル級トーナメント準決勝で須藤元気に腕を取られた。

「これまでは、まだ関節や絞め技に自信がなかったんですよね。ホイラーと闘ったあとに、“行ける”と言う気持ちにあったけど、時間がかかるもの分かっていた。昨年、ああいう結果が出るのも分かっていたし、べつに恥ずかしいものではない。今の総合格闘技は、そんなに甘くないですからね。昔だったら、僕の能力があれば、倒して殴ってそれで終わっていただろうけど、今はそんな簡単に殴らせてくれないほどレベルが上がっています。だから、なるべく寝技にならないように、無駄に力が入りすぎて、スタミナをロスしてきたんです。須藤戦の2R目は、もはや自分ではなかったですから」

 レスリングの天才と呼ばれる宮田は、鍛え上げられた肉体に目を奪われ、パワーファイターのイメージが強い。しかし、レスリング時代の彼は、力ではなく技で勝ってきた。今は原点回帰をしているという。
「関節を取られるのが怖いと思えば、動きが堅くなってしまう。そうすると余計なところに力が入って、スタミナを失ってしまうんですよね。でも、出稽古でいろいろな選手と一緒に練習させてもらったり、アメリカやタイでトレーニングしたこともあり、随分、自信がつきました。今では、この体勢になったら100%、関節を取れるという形ができた。前回のエリカス戦は、その成果です」

 所英男を破っているエリカスをパウンドでボコボコにし、腕十字で一本勝ちを奪った、その試合は、宮田の本格的な総合デビュー戦みたいなもの。そのくらいの意義が、エリカス戦にあった。しかしながら宮田は、少しも納得していなかったという。
「エリカスに勝ったあと、打ち上げパーティーに彼も来ていて、顔がボコボコに腫れていたんです。それを見て、嫌な気分になりましたね。僕は殴られるのが嫌ですけど、殴るのも嫌いですから。子供の教育に悪いし。本当は、グレイシー柔術みたいに、相手を傷つけずに勝てればいんですけど、そこまでの技術はないので、どうしても殴らないとならない」

 宮田にとっての強さとは、達人の域に達すること。相手を傷つけずに勝つ。これが究極の目標だという。彼は漫画『グラップラー刃牙』の主人公を目指している。刃牙と同様に、宮田もまた究極の強さを追い求めているのだろう。
「肉体は似てきたので、あとは強さですね。なぜ刃牙を目指すか? 男だったら、誰でも憧れるのではないですか。僕は格闘技が大好きなので」と笑う宮田。彼は今、レスリングの道場にも顔を出し、もう一度、自分の軸を鍛え直している。そして最後に宮田は、こう言った。

「僕の目標では、今年、総合格闘技を全勝して、来年はレスリング代表の予選があるので、それに専念したい。レスリングはプロとアマの垣根がないので、HERO'Sの王者のままオリンピックに出たら面白い」
 KID対策が万全だと自信を持つ宮田は、すでに『刃牙道』が見えている。5・3HERO'Sでは、本当に番狂わせが起こるかもしれない。■

>>『Sammy Presents HERO’S 2006 ミドル級世界最強王者決定トーナメント06 開幕戦』実施概要

>>宮田和幸:プロフィール

レスリングの天才が、“格闘技の神の子”に挑む
「ムエタイの元王者ともスパーリングをしています。蹴りはようやく力を抜いて出せるようになりました」(宮田)

「一本勝ちをしたい」と宮田。これまではパウンドのイメージがあったが、KID戦で得意の腕十字を狙うのか!?


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