99年、“寝技のワールドカップ”アブダビコンバットで準優勝。01年、総合格闘技ブームの火付け役となったアメリカのUFCにレギュラー参戦。今年、プロ10年目を迎える宇野薫は、そのキャリアの大半を対世界というテーマとともに過ごしてきた。今でこそ日本人選手が当たり前のように海外で闘うようになったが、当時、中軽量級のファイターが国外で試合を行なうことは、極めて珍しかった。そんな総合格闘技界のパイオニアは、各国の強豪が集う5・3『HERO'S』に挑むにあたって、対世界を強く意識しているようだ。

「日本人ということをすごく感じたのは、アブダビで準優勝した時ですね。あの時は日本チームとしてアブダビまで行って、オリンピックのように他の団体の人たちと一丸となって世界に向かっていった。すごく楽しかったですね。UFCに参戦した時も、対世界は意識していました。そのためにUFCに行ったようなものですから。そういった意味では、対世界ということには人一倍、敏感なのかな」

 日本人キラーのギルバート・メレンデスや、ヨアキム・ハンセンをあわやというところまで追い詰めたJ.Z.カルバンなど、ミドル級世界最強王者決定トーナメントに参戦する海外勢の顔ぶれは、昨年以上と言っても過言ではない。宇野と対戦するオーレ・ローセンも、『HERO'S』で須藤元気を、K-1 MAXでドラゴを相手に強靭な体力と精神力を見せ付けている。だが宇野は、そんな苦境が待ち受けている今大会が楽しみでならないというのだ。その理由を、彼は次のように語っている。

「門馬さんや中原といった仲間と一緒に、注目される舞台に出られるのはうれしいですね。気合も入ります」
 カルバンと闘う門馬秀貴と、アイヴァン・メンジバーと拳を交える中原太陽。ともに、宇野の背中を見て育った後輩だ。これまで世界を相手に孤高の闘いを繰り広げてきた宇野に、気付けば戦友ができた。これも、宇野が道を切り拓いてきたことに対する、一つの成果かもしれない。

 とはいえ、8月のトーナメント準々決勝および、10月のトーナメント準決勝&決勝戦で、門馬や中原と対峙する可能性も否定はできない。だからこそ、宇野は「あんまり周りは気にしない」という姿勢を強調した。あくまでも、マイペースに。それは、ローセン戦に向けた対策面でも如実に表れている。
「ローセン選手は、体がガッチリしていて力強さを感じます。だから、どんな打撃も効くと思います。打撃系だからといって、寝技ができないわけでもない。対策? とくに、いつも通りです。打撃も、寝技もやっています。長期戦になるかどうかも、流れによってですね」

 打撃を警戒するにしても、過剰に意識し過ぎたりはしない。宇野曰く、何かに捉われることは足元をすくわれる結果を招きかねないというのだ。だからこそ彼は、現時点でトーナメントの優勝について大手を振って宣言するような真似もしない。
「王者の山本“KID”徳郁選手が、頂点であるということは意識しています。でも、あまり考えすぎないで一戦一戦を着実にこなしたいです。対戦することがあったとしても、準決勝くらいから。今は、目の前に集中します」

 昨年のトーナメント準決勝でKIDに敗れたことを踏まえれば、宇野の胸中にリベンジするという思いが宿っていないとは考えにくい。来るべき日に向け、彼は沸々と闘志を燃やしているのだろう。今はただ、日本の強さを見せ付ける。そんな信念にのみ従い、宇野は自然体で5月3日にリングに上がるのだろう。■

>>『Sammy Presents HERO'S 2006』実施概要

>>宇野薫:プロフィール

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昨年度のトーナメントで3位に輝いた宇野は、開幕戦に出場するメンバーのなかで断トツの実績を残している。目指すは、当然のごとく優勝だ!


トーナメントに初参戦する同門の門馬秀貴や中原太陽を、宇野は「彼らは強いですよ」と何度も絶賛していた

ローセンに対して特別な対策を立てることもなく、宇野は自然体で試合に臨むという。相手に捉われない柔軟性があるからこそ、宇野は抜群の安定性を誇るのかもしれない


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