――ブラックマンバ戦は、危ない場面もありましたが、見事な逆転勝利。大会のMVPといってもいい活躍でした。
宇野 正直、勝ててホッとしていますね、次のラウンドに行けるってことで。ホッとしているのが一番です。
――ダメージはいかがですか。
宇野 眼のほうがちょっとありますけど、大丈夫です。
――どういう状況だったのでしょうか。
宇野 VTRを見ていないのでなんとも言えないんですけど、最初のヒザ蹴りで切れてしまったんだと思います。もらったときにヤバイな、と思いましたし。あのヒザ蹴りは、もらわないように練習をしていたのに、もらってしまいましたね。もらった理由としてはブラックマンバ選手が巧かった、というのもあると思うんですけど、入り方が単調すぎたのかも知れません。
――練習では、簡単に懐へ入らないように意識していたわけですね。
宇野 そうですね。何かしら技を出してから入る、というのを心がけていたんですけど。あの時だけはちょっと違いましたね。
――所選手と同じようにヒザ蹴りをもらったように見えましたので、驚きましたよ。
宇野 あのときは、もらっちゃった、上から殴られてこのまま負けちゃうのかなと思ったんですけど、ここで諦めちゃいけない、と切り替えて。
――意識はあったわけですね。
宇野 ええ。クラッともしていませんでしたし、上から殴られている時も、意識はハッキリしていました。体は動きましたから、組み付かなきゃ、という感じでしたね。
――巻き返しは見事でしたが、その時の気持ちは。
宇野 必死に(足を)取りに行きました。ちょっとでも組み付けたんで、取りに行こう、と。そういった気持ちが行動に出たのでしょう。ヒザをついた状態でジリジリと、一本を取りに行こう、と。とにかく必死でしたね。
――その気持ちの強さの背景にあるものは何だったのでしょうか。
宇野 こんなところで負けられない、というのもありますし、皆さんの応援もあります。道場の子だったり、スタッフ、仲間と挙げたらきりがないんですけど、後押ししてくれた分、頑張らないといけないと思いました。それを考えたらこんなところで終われない、と。あとは無心でやっていましたね。
――セコンドの指示は覚えていますか。
宇野 覚えています。聞こえていましたし、一生懸命声を掛けてくれたんで。
――何を指示されましたか。
宇野 そうですね…あんま聞こえてなかったかな(笑)。ヒザ蹴りを食らったときに落ち着いて、とは言われました。意識が飛んでると思われていたんです。
――お客さんの反応は、闘っていて分かるものですか。
宇野 歓声とかは聞こえていましたけど、そのなかで明確に聞こえるのはセコンドの声ですね。
――ブラックマンバ選手のリーチの長さは感じましたか。
宇野 やはり入りにくさは感じました。打撃自体はヒザ蹴りが巧かったですね。タイミングやパワーはそこまで感じられなかったですけど。とにかく必死に首を取りに行こうと。それだけですよ。
――作戦としては打撃を出していきながら、タックルに入る、と。
宇野 組み付いて寝技に持っていく。寝技で首を取りに行くのをイメージしていました。打撃で勝負してみようとは思わなかったですね。向こうが上だと思ってますんで、自分の得意なところに引っ張り込もうと。
――今回のミドル級トーナメントで唯一、日本人で残ったのが宇野選手です。ホッとしていますか。
宇野 本当にホッとした部分もありますけど、残っているメンバーはみんな強い。個々のタイプも違いますし、対戦相手によって対策を変えていかなければならないですね。
――どのタイプがやりやすいですか。
宇野 あまりタイプとか考えずに。組まれるべくして組まれて、対戦相手が決まってから考えるべき事ですからね。
――仲間の高谷選手が飛びヒザ蹴りで負けてしまい、ショックだったのでは。
宇野 一緒に練習してきましたから、ああいった形で負けるとは思っていなかったですね。ショックですし、心配です。それに厳しい世界だな、と痛感しましたし、対応してきたカルバン選手の強さも感じました。あの強い高谷選手でさえ、ああいった形になってしまうのはビックリしました。
――試合を見る限りでは、カルバン選手は頭一つ抜けている印象でしたが、どうですか。
宇野 個々の持ち味がそれぞれあるんで、誰が一番と言うのはあまりないような気がします。でもカルバン選手は強いですよ。
――今後に向けての課題は。
宇野 今回の反省点もかなりありますんで、それを踏まえて。次まで期間が短いんですけど、その反省点を確認しながら、また新たな進化を取り入れつつ次の試合を迎えたいな、と思います。
――優勝するために必要なものは何だと思いますか。
宇野 必要なもの…難しいですね。どうでしょう(笑)。そこまで考えてないですね。いっぱい練習してベストな体調にしてリングに上がれれば。必要なのはそういったものだと思います。
――去年のミドル級トーナメントと比べて違いますか。
宇野 各選手の実力が高いということが見られると思います、どの対戦でも面白いと思います。
――この階級のトーナメントですとレベルは変わらないですか。
宇野 どうでしょう、やってみないと分からないですけど。残った4人ということでレベルは高いと思いますけど。
――桜庭選手のHERO'Sデビュー戦をどう思われましたか。
宇野 リングサイドで見ていました。入場してきたときにすごく嬉しかったですし、楽しみにしていました。試合内容も色々問題があったみたいですけど、すごく強かったと思います。記憶がないという中で、無意識であそこまで出来るということに凄さを感じます。
――宇野選手も桜庭選手も追い込まれてからの逆転勝ち。その地力は、どこから出てくるのでしょうか。
宇野 気持ちの面、そして練習してきたことが結果になって出ていると思います。桜庭選手も練習してきたことが出ていて、とても強かったですし。
――スリーパーが入ったときは、これで勝つ、という感じでしたか。
宇野 勝てるというか、無意識のうちに体が反応したというか、必死になって取りに行っていました。余裕なんか、まったくないです。このままだと負けると思っていましたし、残り1分くらいだったはずですけど、どうにかしなきゃという感じですね。だから、勝ち名乗りを受けたときはホッとしました。ブラックマンバ選手は頭も良くて、ひじょうにいい選手でした。戦前から思ってはいたんですけど、態度もそうですし、自分のこともリスペクトしてくれていましたからね。ちゃんとお礼もしてくれましたし、キャラクターとは全然違います。すごく、いい経験になりましたよ。
――次の試合の抱負をお願いします。
宇野 次の試合、ベルトまであと二つなんですけど、精一杯頑張るだけですね。応援、よろしくお願いします!■

8月15日に双子のパパとなった宇野薫。ブラックマンバ戦直後は、この痛々しい姿だったが、嬉しさ倍増だろう

宇野は相手のことを気遣いながら、言葉を選ぶ。彼らしい姿だ

ミドル級トーナメントで残った日本人は、宇野のみ。KIDや元気がいない今回、彼には大きな期待がかかる


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