――まずは、おめでとうございます。夢がつながった、という感じですか。
大山 そうですね。ホッとした部分と、もっと磨いていかないといけないな、という緊張感を改めて感じています。
――終わってすぐに、そう思えるわけですか。
大山 勝負の厳しさをホドリゴ選手が改めて教えてくれたような気がしますね。簡単には勝たせてくれないな、と。
――試合中は、もっといけると感じていたのですか。
大山 はい。もうちょっとで、という感じだったんですけど、巧くかわされていましたね。
――パウンドからパンチを入れてもポイントを外されていた、と。
大山 多分、外されているんでしょうね。手応えがあるのもあったんですけど、やっぱり巧いんでしょう。ごまかし方も、逃がし方も巧いんです。もっと勉強しなくては、と思いました。
――動きのある試合がしたいとコメントしていて、ご自身ではどうですか。
大山 いやー、もうちょっと違う展開を予想していました。もっともっと動いていきたい、と思ったんですけど。グレイシーの勝利への執念、ホドリゴ選手の寝技の技術はさすがだな、と思いましたね。それをすごく感じました。ほんのちょっとのミスで、全部ひっくり返されてしまうような緊張感がずっと続いていたんで。改めてグレイシーはすごいな、と感じました。
――膠着した試合を予想していたんですが、動きがあったので大山選手のペースで進んでいる、と感じたのですが本人はそれどころではなかった、と。
大山 本人は余裕なかったですね。ホドリゴ選手が下からいろいろと狙っているのを試合中ずっと感じていたんで。
――何を狙っていたのでしょうか。
大山 僕の動きの中でミスが出ること、それにエサを撒いているのも分かったんで、すごく疲れましたね。
――二人の間に第三者には見えないせめぎあいがあった、と。
大山 すごくありましたね。二人しか分からないですけどね。
――大山選手は、これをやったらこうなるな、というのが頭の中で想像できていたわけですね。
大山 それはありましたね。リズムに乗ったらこう…流れが一気に変わってしまうんだな、という緊張感はずっとありましたね。
――こうなったら腕を取られてしまう…など、自分の負ける姿まで想像出来たのでしょうか。
大山 負ける姿…そういった危険はあるな、とは感じていました。それだけ技術の高い選手ですから。
――戦前、戦後で相手の印象は変わりましたか。
大山 思った通りです。日本人は彼に勝ってなかったじゃないですか。その理由が分かった気がします。センスもすごいし、グレイシーとしての精神面もすごいな、と。
――精神的な強さはどこから感じられるのですか。
大山 勝ちたいっていう執念が、相手が下になっていてもひしひしと伝わってくるんです。
――それは目つき、雰囲気、動き、何から感じられるのでしょうか。
大山 全部です。絶対に負けられない、という気持ちが向かってくるんです。パウンドで当てても、折れないんですよね。いいのが何発か入ったんですけど折れないんです。グレイシーには毎回、勝負の厳しさを教えてもらって、今回も本当にいい力もらったな、と思いますね。
――過去のトラウマを払拭できたのではないでしょうか。
大山 やっと何か開放された気はしますね。グレイシーというトラウマから、一つ上の階段に登れたんじゃないかな、と思っています。長かったですけど。一つ試練を抜けたかな、と。
――大山選手からすると、ここまで来るのは長い道のりだったのでしょうね。
大山 ありましたね。ずっと付いて回っていましたからね、グレイシーのトラウマが。
――今はホッとしている感じですか。
大山 そうですね。やっと新しい自分、新しい扉を開けることが出来たんだな、と実感しています。
――扉を開けたら、そこに何がありましたか。
大山 チャンピオンベルトがちょっと見えてきました。あと二つ行けば獲れるんで。
――そこまで行くには秋山選手、桜庭選手、マヌーフ選手がいます。
大山 やるっきゃないですよね、信じて。今までの格闘技人生の点が線になってきている気がするんです。桜庭選手にしても、グレイシーにしても本当、僕にとって大きな意味のあるトーナメントじゃないかな、と感じているんで、その先に何かあるんじゃないかな、と。
――まだ対戦相手は決まっていませんが誰が来ても強豪です。しかし、ただ一人、誰よりも闘いたい人がいますよね。桜庭選手とはいきなり当たりたいですか、それとも決勝戦がいいですか。
大山 難しいです…うーん、難しいですね。
――難しい理由は何でしょうか。
大山 ベストコンディションで思いっきりぶつかりたいという気持ちと、決勝でやれたらこんなにドラマチックなことはないな、という思いが半々なんで。どっちにしろ、すごくワクワクする展開です。
――たしかにこうなっているのは、何か意味があるのではないでしょうか。憧れの桜庭選手と同じトーナメント、眼のケガやグレイシーとの対戦、運命的なものを感じますよ。
大山 本当つながってきているんですよね、ここに来てようやく。弱気になった自分も沢山いたんですけど、本当に諦めずにここまでやってきてよかったな、と思っています。
――誰と当たっても負けられませんが、マヌーフ選手と当たればリベンジマッチになります。
大山 誰と当たるか本当に楽しみですよね、ワクワクします。
――桜庭選手の試合はいろいろと問題がありましたが、動きを見てどう感じましたか。
大山 あそこで逆転できるのはものすごいですよ。さすが桜庭和志と思いましたね。神がかり的でした。普通なら右フックもらって倒れた時点で終わっていますから。すごい人なんだな、と。
――本当であれば、止められてもおかしくない試合でした。しかし、桜庭選手の本当の強さが見られたのは、事実ですよね。
大山 正直、二人の自分がいて、安全面からいったら桜庭選手の体が危険だから止めてくれ、という気持ち。もう一つが、桜庭選手が勝って僕と闘ってほしい、という気持ちがありました。
――勝ってくれという気持ちで見ていたわけですね。
大山 やっぱり、モチベーションの一つなんで(笑)。頑張れって思っていました。
――二人の自分というのは、そういうことなのですね。
大山 だから、すごく複雑でしたね。自分とは闘って欲しい、でも体のことが心配という感じで。正直、心配でしたね。見ていて怖かったです。
――自分が桜庭選手と向かい合う、相対する姿は想像できますか。
大山 はい、それは。だって僕は本当に桜庭VSホイス戦に感動して、次の日に桜庭選手のテーマ曲を聴きながら朝のトレーニングをしていたんですよ(笑)。あの時のことを思い出しちゃいますよね。それが続いていて、つい体を動かしてしまう、といった感じです。すごい感動をもらったんですよ、「何だ、この人は」みたいな。それで色々あって、同じリングに立ったわけじゃないですか。思い続けていればちゃんと形になっていくんだな、と思いました。ちょっと早いんですけどジーンとしちゃいました。
――自分としては誰と当たりそうだな、と思いますか。予想として。
大山 何気にマヌーフ選手が来そうな感じはしますよね。
――簡単には桜庭選手と当たれない、と。
大山 何か…そういう役回りじゃないですか(苦笑)。分かんないですけど、来るんじゃないかな、と腹は決めているんですけどね。気合いを入れないと。
――テーマとしてはリベンジをして、桜庭選手と対戦する方がいいですよね。秋山選手かも知れませんが。
大山 やっぱり一つ山を越えてから向き合いたいな、という気持ちはあります。スッキリした形で。
――抽選はどうですか。
大山 全然、何でも。それも運命なんだな、と思います。受け入れることは出来ます。楽しみですね、すごく。■

憧れの桜庭、リベンジしたいマヌーフ、柔道対決となる秋山成勲との試合。大山はすべての試合にテーマがある

目のケガや数々の試練を乗り越えて生き残った大山。彼の言葉には、深みが出てきた

「グレイシーというトラウマから、一つ上の階段に登れたんじゃないかな、と」(大山)

堅実なファイトスタイルが強みの大山は、もちろん10・9ライトヘビー級トーナメントを制する力を持っている


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