“レスリングに専念する”と宣言した山本“KID”徳郁が、大晦日『Dynamite!!』に参戦する。これは、谷川プロデューサーとの男の約束だったという。相手は、レスリングのアテネ五輪金メダリストのイストバン・マヨロシュ。果たしてどんな試合になるのか、本人に直撃した。


試合の前のドキドキ感がいい!!

——『Dynamite!!』への電撃参戦には驚きました。レスリングの全日本選手権(2007年1月25日)が目前まで迫っていますから。
KID そんなに騒ぐことはないよ。もともと、大晦日は出るって言っていたからね。その約束を守っただけのことだから。出たいから出る、それだけ。
——しかし、ケガを心配するファンも多いと思いますよ。
KID いや、大丈夫だって。逆にそんなことを考えてると、ケガしちゃうかも知れないし。レスリングの練習だって、すごくハードで危険だから、同じこと。だから、俺自身、ぜんぜん心配していない。
——それを聞いて安心しました。
KID でも、久しぶりだね。この試合前のドキドキ感が。
——やっぱり、総合格闘技の試合は、レスリングとはまた違った面白さがありますか。
KID ある、ある。HERO'Sも試合を観ちゃうとやりたくなっちゃうから、あまり観ないようにしていたし。レスリングの練習は本当、地味だからね。スパーリングの毎日だから。
——レスリングの練習は充実していると思いますが、手応えはありますか。
KID 手応えはあるね。完全にレスリングの選手に切り替わっている感じ。練習したあとにグタ〜ってして、やった〜って思う(笑)。
——周りに強い選手がいると思いますが、レベルは追いつきましたか。
KID ほぼ一緒。これから完璧な状態に持っていく感じかな。
——週に6日ほどトレーニングを?
KID そう、学生と一緒にやってるから。でも、朝は10時から始まる。学生はもっと早いけど、俺は学校がないからね。午後の練習は学生と一緒。
——総合とレスリングでは使う筋肉が違うと言われますが。
KID 全然、違う。打撃とかないから、ずっと力比べみたいな。最初は体がついて行かなかったから、久しぶりで疲れたけど、最近は大丈夫になった。
——レスリングの合間に、打撃の練習をしたくなることはありましたか。
KID なる、なる! だから、たまにやってた。息抜きみたいな感じで。


金メダリストはやりがいがある

——対戦相手のイストバン・マヨロシュ選手のことは知っていましたか。
KID いや、知らない。ずっとレスリングから離れていたから。
——アテネ五輪金メダリストと聞いて、モチベーションは上がりましたか。
KID もちろん。金メダリストだからやりがいはあるよね。
——スタイルは違いますが(マヨロシュはグレコローマン、KIDはフリースタイル)、金メダルを目指す上で、いい経験になることでしょうね。
KID 普通の格闘家よりはパワーがあると思うから、そこらへんがどう来るのかな。ちょっとレスリングで試したいって気持ちもあるよ。組んでみたい。
——でも殴るかもしれないと(笑)。
KID もちろん総合だし、ケンカだから。レスリングの試合じゃないから、それはもちろん手が出るけど。
——金メダリストを倒せば、今度はレスリングに舞台を移したときに、精神的に優位に立つかもしれないですね。
KID うん。勢いづくんじゃないかな。すごくプラスになると思う。
——谷川プロデューサーが金メダリストを対戦相手に用意したのは、オリンピックに向けて頑張ってほしい、という気持ちが込められていると思います。
KID そういうメッセージは感じる。よく見つけてきたなって、俺も知らない選手を。60kgだから丁度、俺と同じくらいだしね。
——ほかの相手でも参戦しましたか。
KID あんまり考えてなかった。誰でもいいやって感じかな。


俺は面白いことしかやらない

——参戦が決まったときは、妹の聖子さんとレスリングの試合をやるんじゃないかと思っていましたよ。
KID いきなり?(笑)。それはない。
——父親の郁榮さんは、今回の試合について何て言われていますか?
KID 特に話してない(笑)。1月25日の全日本選手権のことだけしか連絡してない。知ってるけど、ケガすんなよ、くらいの感じだと思う。
——信頼しきっているのですね。
KID そっすね、俺に言っても聞かないから(笑)。頑張れよ、ケガすんなよ、みたいな感覚なんだと思う。親父も、家族もみんなそう。俺を信頼してくれているし、やりたいと思ったら、止められてもやっちゃう性格だからね。
——オリンピックは山本家の歴史を振り返ると悲願ですからね。家族からの期待は感じますか。
KID 期待というよりも、しっかりやんなよ、みたいな。叱咤激励(笑)。
——期待の裏返しですね。
KID 今は俺、レスリングに専念しているけど、これからもいろいろとやって行きたい。とりあえず、今は“レスリング編”みたいな感じだね。
——HERO'Sミドル級王者、4秒KO記録、そしてレスリング挑戦と、我々の想像以上のことをしていますね。KID選手の目標を100とした場合、今はどの辺りにいますか。
KID まだ分かんない。あっという間に100になっちゃうときもあるしね。でも、今はまだ全然。これから先もいろんなことをやりたいし、その方が面白いでしょ。
——突然、違うことをやっているかも知れないということですか?
KID そう。突然、やりだすよ(笑)。周りが、「えッ、レスリングじゃなかったの!?」みたいな。総合じゃなかったの?って。それは本能に任せてる。でも大丈夫。俺は、面白いことしかやらないから。それだけは約束するよ。■

»『FieLDS K-1 PREMIUM 2006 Dynamite!!』対戦カード
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大晦日、金メダリストを破って勢いに乗りたいKID

「俺を信じて」とKID節が爆発。もちろん、みんな彼を信じている


オリンピックのKIDも観たいが、やはりHERO'SのKIDも観たい!!




 アテネ五輪金メダリストのイストバン・マヨロシュは、ハンガリー出身で1974年生まれの32歳。90年にレスリングの世界カデット(15〜16歳=当時)選手権のグレコローマン43kg級に出場して優勝。その後、シニアの世界一も期待されたが、2度出場したジュニア(17〜20歳=当時)の世界選手権、そして95年から出場したシニアの世界選手権6度とシドニー五輪で、いずれも上位入賞はならず。いつしか30歳となり、アテネ五輪を迎えることとなった。

 レスリングには、全身を使っての攻防であるフリースタイルと、上半身の攻防に限られるグレコローマンの二つがある。KIDはフリースタイルで、マヨロシュはグレコローマンだ。だがグレコは、フリーと違ってパワーなどの体力がより必要になってくる。

 競技の特徴なのか、グレコローマンの世界チャンピオンの平均年齢は23〜25歳。マヨロシュの年齢は30歳。しかも、アテネ五輪を迎えるにあたり、前年の世界選手権が12位で、過去世界7位が最高だった。そんな背景があったためか、マヨロシュの優勝を予測した関係者は皆無だった。

 だがマヨロシュは1回戦で日本の豊田雅俊を延長の末に逆転勝ちすると、波に乗って勝ち上がり、決勝で02年世界王者のガインダー・マメダリエフ(ロシア)を破って優勝。低迷していたハンガリーに、1992年のバルセロナ大会以来、3大会ぶりの五輪金メダルをもたらしたのだ。苦労人でいて、ハンガリーの英雄。総合格闘技は初めてだが、KIDはマヨロシュのパワーに驚くことだろう。■
(資料&写真協力:日本レスリング協会)
 


アテネ五輪金メダリストのイストバン・マヨロシュ(右)。パワーには要注意だ

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