所英男と並び、ZSTで活躍している勝村周一朗が『FieLDS K-1 PREMIUM 2006 Dynamite!!』(12月31日、京セラドーム大阪)への参戦を決めた。まさにシンデレラボーイとなった勝村の相手は、永田克彦。養護施設で働く彼は、何を思うのか。


忘年会をすべてキャンセル

——まさに飛び級といってもいい『Dynamite!!』参戦。K-1やHERO'Sに出ずに、いきなりの出場というのは、あまりないケースです。
勝村 あまりないですよね。自分でも、ビックリしました。
——対戦カード発表会見では「一回、迷った」と言っていましたが。
勝村 まず、こういう話が来るとは思っていなかったので、まったくの予想外でした。11月の試合が終わって、今年も終わりだということで、忘年会の予約をバンバン入れていたんです。先週くらいから呑む予定がいっぱい入っていたんですけど、それが全部キャンセルです。
——迷われたもう一つの理由は、体重ですか?
勝村 そうですね。僕は体重が64kgくらいで、今回は70kg契約ですからね。しかも、相手の永田(克彦)選手は、85kgで闘っていましたし、レスリング銀メダリストなのでポテンシャルが高い。何もかも、違うという感じですね。でも、体重の前に自分なんかでいいのかというのもありますしね。
——ZSTでは所英男選手のライバルと目されています。所選手には負けていないと思っているのでは。
勝村 いやいや…。
——本当は思っているのでは? 所選手が出ているのだから自分もと考えたりはしないですか。
勝村 いや、ないですよ(笑)。差は自分で分かっていますから。本当にアイツは強いですよ。練習をしていて分かります。
——でも戦績は1勝1敗ですし、勝村選手はレミギウス・モリカビュチス選手にも勝っているじゃないですか。
勝村 作戦勝ちみたいなところがあったんで…。
——それが強さですよ(笑)。
勝村 でも練習では何回かに一回くらいしか取れないんです。3、4回取られて、やっと一本取れるくらいです。
——所選手は「勝村選手は強い」と言っていますが。
勝村 あいつは、そういうことを言う奴なんです。ズルいんですよ(笑)。


施設のことを知ってほしい

——勝村選手といえば、養護施設の職員として有名ですが、働き始めたキッカケは何なのですか?
勝村 たまたまというか、自分が学生時代は先生が大嫌いだったんです。なんでこんな奴ばかりなんだろう、と思っていました。それで自分が学校の先生になってやる、と思って教員免許を取ったんですよ。そういう流れで勉強していたんです。今の施設では働くつもりはなかったんですけど、大学時代の先輩が働いていて誘われたんですよね。一緒に働いてくれと。僕はそのときには格闘技をやっていたんで、それじゃあ練習ができない、試合ができないって断ったんです。それでも話を聞いてくれ、と言われて施設に足を運んだんですね。そうしたら話じゃなくて、いきなり子供たちを預けられちゃって(笑)。晩御飯食べて寝かしつけるときに「帰らないで」って言われて…。そのまま3泊くらいしちゃって、ズルズルと今に至っています(笑)。
——そこで、何か感じるところがあったのですか。
勝村 「いいな」というより知らないことがたくさんあったんです。児童養護施設というものに関しては多少、知識はあったんですけど。でも生活が大変だし、子供たちは何も悪くないのに家庭の事情とかで施設に入っています。そういう現状を目の当たりにしてしまうと、どうしても放っておけないなという気持ちが僕の中で芽生えたんです。それが先輩の作戦だったのかも知れませんけど(笑)。
——なるほど(笑)。
勝村 何とかしたいと思いました。施設はお金もないし、勉強していた僕ですら知らないことがたくさんあったんで、世間の人にも知ってもらいたいと考えましたね。だから、これはもう働くしかないなと思いました。自分がやるしかないと思っちゃいましたね。
——施設の子供たちには、どういった葛藤があると思いますか。
勝村 子供たちは自分に問題があったわけではなくて、家族の事情があって施設で生活せざるを得ないんです。ですけど、どうしても本人たちは立場が弱くなっちゃうんですよね、施設で生活していると。それに自分が悪いから施設に入っているという、マイナスを自然と背負ってしまうんです。そこを自分の関われる範囲だけでもいいから、少しでも変えていきたい、というのはありますね。


与えようとするのはいやらしい

——勝村選手だから与えられるものは、何だと思われますか。
勝村 与えようとしてやったら、いやらしくなってしまうんで、何かしてあげようというのはあまりないです。僕は自分の関われる子供たちと楽しく生活する、試合や練習の姿を生で見せることで何か感じてくれればと思っています。試合を見た子供に何か言ってもらえると嬉しいですしね。
——勝村選手は難しい立場です。子供たちを利用していると思う、心ない人も出てくるかもしれません。そういったことに対して、葛藤はありますか。
勝村 最初のうちは、すごくありました。初めて会場に子供たちを連れて行ったときからありましたから。変な言い方をしたら利用している見方はされます。もし自分と同じ実力の選手がいて、格闘技一本でやっているとします。僕は格闘技をやりながら、たまたまそういったところで働いていた。試合を作る側は、実力が同じならば、話題性があった方がいいとなると思うんです。今回の大晦日も、実際にそうだと思いますよ。そういったバックグラウンドがあるから、HERO'Sにも出ていないのに大晦日に出られると思うんです。今回の件で悩んだところは実力、体重とそれですよね。いまだに「いいのかな」と思います。
——でも、あえて批判を受ける覚悟で施設のことをアピールしていくと。
勝村 やっぱり、それでも子供たちが応援してくれていますからね。違う施設の会ったことのない子供や、職員の方まで応援してくれるので。それに一般の人たちにもっと知ってもらいたいというのはありますね。利用したりされたりになっちゃうとは思うんですけど、そこはもうしょうがないと割り切っていくしかないです。


入所理由は親の虐待が多い

——利用してもらっていいから、知ってもらいたいということですか。
勝村 そうです、それはあります。
——世間の人に施設の問題を、どう知ってもらいたいですか。
勝村 基本的にはこういった施設があるんだよ、ということです。こういった施設があることを知らない人もいますし、昔でいう孤児院に今はどういった子供が入っているのか、ということを見つめ直してほしいです。僕の施設には天涯孤独、本当の孤児というのはほとんどいないんですね。今一番、多い入所の理由は親の虐待なんです。実態を知れば、そういった問題を考えるキッカケになると思うんですよ。少しでも考えてもらえて、そういった子供たちが減れば嬉しいです。
——かなり重たいテーマを背負い込んでいますね。試合とは違った意味で、プレッシャーがかかってきますよ。
勝村 試合では、そこまで考えられないですけどね。ただ、それも含めて背負ってきているので、最後まで責任を取るつもりで闘っていきます。


太刀打ちできる相手ではない

——永田克彦選手が対戦相手に決定しました。どういったイメージを持っていますか。
勝村 単純にすごい強いですよね。頂点を極めた人ですから。選手としても人間としても、努力、才能を全部含めて普通の人が太刀打ちできる選手じゃないです。
——それに体重差もあります。どんな闘いをしますか。
勝村 開き直るしかないですよ。普通にやったらなにもできないです。思いっきりやるだけですよね。今までの試合は負けられないとか、いろいろとありましたけど、そういう試合ではないですからね。
——勝村選手が背負っているもの、何を見せるかだと思います。
勝村 負けるにしてもなにもできないで負けたら、自分の築き上げたものが全部、崩れてしまう気がするんです。爪あとだけでも残せればいいですね。
——今まで修斗、ZSTで築き上げてきたものが量られるでしょうね。
勝村 今までのものを少しでも出せなかったら意味がないと思います。
——相手が誰であろうと関係なく、大きな壁だと思いますか。
勝村 壁…ですね。


タイガーマスクで入場したい

——所選手の活躍も刺激になっているのではないですか。
勝村 それはありますね。アイツも今まで勝てないだろう、無理だと言われた相手に向かっていって評価を覆していますからね。そういうのをたくさん見てきたんで、自分にとっては刺激ですよね。
——負けられませんね。
勝村 負けられないですね、今回は試合内容で勝負です。
——もしZSTに魂があるとしたらどういったものですか。
勝村 思い切りがよくて、お客さんを喜ばせるところだと思います。そういうのを見せたいですよね。見せなきゃいけないですし。日本で一番、デカイ舞台で、日本で一番小さな団体かもしれない二人がドカンと行きたいですね。
——気持ちがいいでしょうね。
勝村 緊張しますね、本当に(笑)。
——リアル・タイガーマスクと呼ばれていますし、虎のマスクを被るしかないのでは?
勝村 緊張するんで本当に被って誤魔化そうかな、と考えているんです(笑)。
——永田選手は「リアル・タイガーマスクが相手なので、4代目タイガーマスクと練習する」と言っていました。
勝村 いいですね。僕も練習したいです。どうやったらできますかね(笑)。
——最後に、自己紹介を含めてファンへのメッセージをいただけますか。
勝村 ZSTという団体で小さな闘いを見せています勝村です。とにかく自分は思いっきりやるだけなんで、大晦日で「これが勝村周一朗だ!」というのを今まで知らなかった皆さんに植え付けるような試合をしたいと思うんで、応援をよろしくお願いします!!■


»『FieLDS K-1 PREMIUM 2006 Dynamite!!』対戦カード
«勝村周一朗:プロフィール

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