男と男の約束を果たすために『FieLDS K-1 PREMIUM 2006 Dynamite!!』(12月31日、京セラドーム大阪)への参戦を決めた、山本“KID”徳郁。来年の1月28日には重要なレスリングの全日本選手権を控えるなか、イストバン・マヨロシュ戦に向けて絶好調をアピールした。
■俺のことをナメている
KIDは、不機嫌そうに口を尖らせた。
「相手が俺のビデオをみて、大丈夫とか言っていたみたいだけど、ナメている。俺もマヨロシュのレスリングの試合のビデオとかを観たけど、あれでよく言えたなと思うよ」
集まった記者を前にして、精悍な顔つきのKIDは、すぐにでも闘いたいのか目をギラギラとさせてニヤリと笑った。それは怒っているというよりも、自分を奮い立たせてくれる相手が現れて嬉しくて仕方がないという感じだ。
そもそもマヨロシュは、KIDの試合をビデオで見て、今回の『Dynamite!!』参戦を決めたという。さすがにレスリングのアテネ五輪金メダリストだけのことはある。どんな分野にも自信を持ってチャレンジする姿勢は、選らばれし者としてのプライドといっていい。
しかも、マヨロシュからみればKIDは、まだレスリング日本代表にもなっていない新人。未知の競技とはいえ、眼中にないのは当然なのかもしれない。
「オリンピックの金メダリストは、ハンパじゃない。だから、相手は自信があるのかもしれない。でも、これはプロの総合格闘技。スポーツじゃないし、厳しいということを教える必要があるだろうね」
総合格闘技をケンカと捉えているKIDは、“レスリング金メダリスト”だけの肩書きでリングへ上がるマヨロシュに対して、逆に拳で教えるつもりのようだ。金メダルが通用するのは、レスリングの世界のみ。それは、HERO'Sミドル級世界王者の肩書きだけでは、オリンピックでトップに立てないのと同じこと。一からその競技に取り組まなければ、いくらKIDであっても、なかなか世界と対等には闘えない。それを知っているからこそ、KIDは厳しさを叩き込む覚悟なのだろう。
■何が起こるか分からない
レスリングの練習漬けとなっていたKIDだが、『Dynamite!!』への参戦を決めた直後から、2〜3週間、総合のトレーニングもしてきたようだ。契約体重は65kgで、今は63kg。鼻炎持ちなので少し鼻声になっていたが、体調はバッチリだと明かす。また、レスリングの練習したことでパワーがつき、構えが高くなる総合格闘技は、スタミナ面でもかなり楽になるという。
「でも、相手をナメてはいない。何が起こるか分からないのが総合格闘技だからね」とKIDは、マヨロシュとは反対に慎重になっている。1月28日には、推薦での出場を決めたばかりのレスリング全日本選手権が控えている。その前に、ここで試合を落とすわけにはいかないのだろう。
「高田先生にも、周りにも言われたのは、ケガをしないこと。それは当然、分かっている」とKID。マヨロシュ戦を終われば、1月3日からレスリングの練習を再開する予定だ。
■KOじゃないと面白くない
公開練習では、ミット打ちを2ラウンドこなした。サウスポーに構えたKIDは、左のインローをパートナーの左足の内側へ遠慮せずに蹴っていく。レスリングの選手が、この蹴りをディフェンスするのは難しい。相手のパンチに合わせて、ダッキングしてのカウンター攻撃。強烈なミドルキックを当て、タックルを切って仕掛けるなど、対策は十分。いかに金メダリストが相手とはいえ、KIDの方が一枚も二枚も実力は上だろう。
「亀田(興毅)の試合? ああ、テレビをつけたら、もうベルトを巻いていた。でも、判定だったって聞いた。だから別に…。やっぱりKOじゃないと面白くない。俺? もちろん、KOか一本で倒しますよ」
記者から、先日、行われた亀田興毅のボクシング世界戦の話題を振られると、KIDはそう答えた。プロは倒してこそプロ、という考え方を持つKIDは、KOへの拘りが人一倍ある。それだけに、亀田の世界戦の結果は、プロとして複雑なところなのだろう。だが、レスリングの試合を前にして、ここまで強気になれるのは、KIDならでは。どうやら大晦日は、KIDの豪快なKOが見られることになりそうだ。■
»『FieLDS K-1 PREMIUM 2006 Dynamite!!』対戦カード «山本“KID”徳郁:プロフィール
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KIDは、マヨロシュ戦でKO宣言をしてみせた
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鋭い蹴りを披露したKID。この蹴りをもらえば、いかに金メダリストでも、立っていられないだろう |
 マヨロシュはボクシングをかじったことがあるらしいが、KIDは問題にしていないという
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会場の京セラドーム大阪には、KIDの家族も応援に駆けつけるようだ |
 「今回は、飛び蹴りはしない」と笑うKID。自身が持つ、宮田戦での4秒KO記録を破ることができるのか
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