約2年半ぶりにレスリング復帰した宮田和幸が、ベスト8に食い込んだ。
宮田が出場したのは、山本“KID”徳郁が参戦することでも注目されている『天皇杯 平成18年度全日本レスリング選手権大会』。初日の26日では田中章仁が6連覇を達成し話題を集めたばかり。2日目の27日には、宮田がフリースタイルの74kg級に登場した。
■北京五輪に向けてレスリング復帰!!
もともと宮田は、シドニー五輪のレスリング代表。プロに転向してからは、レスリングの試合はもちろんのこと、練習もほとんどしてこなかったという。
だが、KID戦でアゴを骨折して入院しているときに、多くの人と出会い、気軽にオリンピックを目指そうと決意したのだった。
本来は66kg級がベストの階級となるが、パワーアップを図るために74kgへの増量に成功。筋肉を落とさないために、74kg級へのエントリーを決めた。
■攻める気持ちで初戦を突破
二回戦からの出場となった宮田は、早稲田大学の大月葵斐と対戦。序盤、堅さの見られた宮田は、バックを奪ってポイントを獲得する。だが、投げからフォール寸前まで追い詰められ第1ピリオドを落としてしまう。
あとがなくなった宮田は、ここで積極的に攻めて第2ピリオドを奪い返す。決着がつく第3ピリオドも、押し出し、タックル、バックを奪うなどでポイントを重ね、初戦を突破した。
宮田は、プロになってから攻めることの大切さを知ったと試合前にコメント。「レスリングの現役時代は勝つことに拘りすぎて、楽しくなかった。今回のチャレンジは思い切って勝負したいですね」と、アグレッシブに攻めることを約束していた。その言葉通りの勝利だったといっていい。
■三回戦で思わぬ落とし穴
だが、続く三回戦(萱森浩輝)で、思わぬ落とし穴にはまってしまう。「今までになかったルールに戸惑った…」と話していたように、宮田は押し出しでポイントを奪われ、そのまま第1ピリオドを失ってしまったのだ。第2ピリオドこそ取り返したものの、第3ピリオドでも相手に押し出されポイントを失い、そのまま逃げ切られた。
日本レスリング協会は昨年、ルールを改正。マット外に押し出されるとポイントを失ってしまうルールは、宮田が現役の頃とは異なる点。もちろん理解はしていただろうが、実際に闘ってみないとその難しさは分からない。新ルールが壁となってしまい、宮田はレスリング復帰戦を優勝で飾ることはできなかった。
■全日本選抜の出場権を獲得
試合後、会見を行った宮田は悔しそうな表情で心境を告白した。
「ルールに慣れていないと言ったら言い訳ですけどね。押し出されたことで疲れちゃいました。やりづらかったです」と、押し出しでピリオドを奪われたことを敗因に挙げた。
「楽しんでやろうと思ったんですけど、オリンピックがかかっているんで・・・緊張しました」と、攻める気持ちも持ちながら勝たなければいけないという精神的なプレッシャーも感じていたようだ。さらに、「アマチュアも厳しいですね」と、ポツリとこぼした。
しかし、収穫がなかったわけではない。今回の全日本選手権でベスト8に入ったことにより、『明治乳業杯全日本選抜選手権』(6月9〜10日、代々木第二体育館)への出場権を獲得。「天皇杯で感触を掴みたかったんですけどね。これからもレスリングの練習は続けていきますし、やれそうなら出場を考えます」と、全日本選抜選手権への出場を示唆した。
宮田の今後の動向にも注目が集まるが、いよいよ明日の最終日には山本“KID”徳郁が登場する。盛り上がってきたレスリング全日本選手権は、最後の最後まで目が離せなくなりそうだ。■
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新ルールに苦しめられの敗戦。だが宮田は、全日本選手権でベスト8に食い込んだ 
2回戦(大月葵斐)で宮田は、苦しみながらも逆転勝利を収めた 
3回戦(萱森浩輝)では、押し出しでポイントを奪われて敗北
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悔しそな表情を見せた宮田だが、まだオリンピックへの道が閉ざされたわけではない。今後の動向に注目が集まる |
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