メルヴィン・マヌーフが、所英男とタッグを組んだ。いよいよ4日後の開催まで迫った、『SoftBank presents Dynamite!! USA in association with ProElite』（6月2日＝現地時間、アメリカ・『ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム』）。各出場選手が続々と現地しているのはお伝えした通りだが、階級の違う選手との技術交流が盛んに行われているようだ。
　我々は、22日に現地入りをしている所が、マヌーフと一緒にトレーニングをしているとのニュースをキャッチ。早速、その場所を突き止めることに成功した。そして取材班が目撃した光景は、想像を上回る内容といえた。

　グローブをはめた二人は、軽くマススパーからスタート。ジャブからのローキック、ジャブからのハイキック、右ヒザ蹴り→左フック→右ローキックとコンビネーションを増やし、交互に繰り出していく。二人ともゆっくりと動き出し、試合までの調整を加減しながらやっているように見えた。
　だが、マヌーフが所属するマイクスジムのマイク会長が、ミットを持ち、「カモーン!!」と叫ぶ。これに呼応するように、マヌーフのスイッチが入った。
「オリャー!!!!」と雄叫びをあげると、ド迫力のパンチやキックを次々と叩き込んでいった。これには、さすがの所も口あんぐり。
「あ、あの人は普通じゃないですね…」と目を見開きながら、呟いた。
　するとマイク会長が、「いいだろう。はい、じゃあ今度はトコロだ!!」とビックリの指名。マヌーフの凄まじい攻撃力に、「あんなに緊張の糸が張り詰めた空気を作られて、入りにくいなぁ…」と戸惑う所。だが、マイク会長の指名を断るわけにはいかない。緩んだ表情が一変し、本気モードに。ここで所は、言葉とは裏腹にとんでもなく進化した姿をみせた。
　さすがにマヌーフほどの破壊力はないが、素早い動き、手数の多さは別人になっていた。"人食い"マヌーフと一緒に練習をしている効果が、間違いなく表れているようだ。
　マヌーフが、「へい、トコロ！　君の打撃はつねに進歩しているぞ」と珍しく褒め称えると、「いやあ、せっかく一緒に練習をさせてもらっているので、いいところはマネをしないともったいないですからね」と所は、満足そうに笑い返した。

■マヌーフが"いい人"に!?

　二人がコンビを組むことになったのは、4日前。ビザの関係でスパーリングパートナーや寝技のコーチがアメリカへ来られなくなり、たまたま宿泊ホテルが一緒だったことから、マヌーフが所に声をかけたのだという。「トコロとは階級が違うし、寝技がとてもうまい。それに、とてもハートのあるいい奴だからな。ガッハッハ」とマヌーフは説明した。猛獣にナンパされた所は、「あ、あ、やっぱり最初は怖かったです。でも、子猫を扱うように優しくしてくれるって言ってくれたので。つい…」と衝撃告白。
　所は一緒に練習することになってからというもの、生まれて初めて金縛りにあってしまい、思わずセコンドの奥出雅之の名前を口走っていたという。まるで、狼がやさしいおばあちゃんに変装して子供を食べようとする、『赤ずきんちゃん』みたいな話だ。
　ちなみに、この日の練習では"ニセ・ホンマン"のニックネームで親しまれる奥出が、マヌーフに腕十字で一本をとられ、スタンドでボコボコに殴られる悲惨な姿に。「あ、あの人には、僕のテクニックはまったく通じませんでした。タックルをとるとか、テイクダウンをするとか、それ以前の問題ですね」と呻いた。所も、意外とマヌーフは寝技がうまいことに驚いたようだ。
「トコロのおかげで、オレ様の寝技もうまくなったぜ」とマヌーフは、舌なめずり。さすがに"人食い"と呼ばれるだけあって、マヌーフもさらに進化したのだろう。
「相手のユン・ドンシク？　まったく問題にしていないね。立ち技でKOしてやるぜ。寝技でもいいけど、あれだけの大きな会場で闘うんだから、立って倒した方がみんなが喜ぶ。楽しみだなぁぁ!!　ウッシッシ」と、一人で浮かれるマヌーフ。この虎の穴ならぬマヌーフの穴には、ジョニー・モートンと闘う塩コショーのベルナール・アッカ、ジェーク・シールズと対戦するイスラエルのイド・パリエンテらも参加している。すべての栄養素をマヌーフが食ってしまうのか!?　この男には注意した方が良さそうだ。
　試合まで、あとわずか。マヌーフと所の強力コンビが10万人を独占！　なんてことが起こる可能性もあるぞ。■

■イド・パリエンテのコメント

「私は、イスラエル出身で今も母国に住んでいます。7歳で空手をはじめ、16歳で柔道、19歳で柔術を学び始めました。そして今では、ボクシングやムエタイもやっています。空手は黒帯、柔術は茶帯です。柔術のヨーロッパ大会で優勝した経験もありますよ。2000年8月にアメリカで行われた『グラディエーター』という大会でデビューして、2001年までに9試合しました。ですがイスラエルに帰国してからは、試合がありませんでした。MMAはイスラエルで人気のあるスポーツですが、あまりメジャーな大会が開かれないからです。ですが、今年から格闘技の番組がテレビで放映されることになり、ようやく私の試合も流されることになりそうです。弟がブラジルで柔術を教えていて、よく一緒に練習をしています。あと、パトリック・ビターンというフランスの柔術黒帯の選手とも、練習をしています。今回の試合をキッカケに、どんどんチャンスが欲しいですね」

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